あなたは私が眠るまで、抱きしめていてくれる。
毎晩、あなたの腕にはいりこむ。あなたは私の頭を撫でて、髪を梳いて、すこしのキスをくれる。その仕草が、乱暴な猫が一生懸命やさしく振る舞おうとしているみたいにぎこちないのだけれど、私はあなたの腕の中でこの上なく安らかで幸せな気分になれる。その不器用さが、私の願いを懸命に実現させようとしているのをひしひしと感じさせてくれるから。この人はきっと、誰かに対して、世間一般でいわれるやさしい振る舞いをすることに慣れてないのだと思う。それなのに、慣れない仕草を繰り返し続けるこの人はとてもやさしい。もしかしたら私は愛されているのかな、なんて思ったりする。それだけであなたのことをもっと好きになる。息を吸うたび、眩暈のようにくらくらする。あなたが好きだ。大好きだ。
わたしはあなたになりたい。混ざり合ってあなたの一部になってしまえばいい。それが無理ならあなたの所有物になりたい。無理やりに上を向かされて、口に入れられたものをなぞるように頭を揺さぶられて、吐き出されるものを嚥下して。そんなふうに扱われたい。私の行動のすべてをあなたが決めてくれたらいいのに。
私はあなたの操り人形になりたい。

唐突に抱きつかれて、壁に叩きつけられて、咬みつくみたいなキスをされて。すべて無理やり押し流すみたいに、私を扱う。狂おしいほどの愛をあなたから受けとる。こんなふうに愛されたかった。明日も親も運命も忘れてしまえるくらい、すべてを壊してしまっても構わないと思えるくらい、私が壊れてしまっていても気が付かないくらい、激しく愛されたかった。あなたに本気で抗うふりをしながら、ぎりぎりで従い続ける私はあなたを受け入れ続ける。なんて幸せなんだろう。そうしている間だけ、私は生きていることを実感する。胸が苦しくて息ができない。意識を失う寸前で落ちてくるあなたの吐息だけを吸って生き延びていく。

もうすこしで私はあなたのものになれるだろう。もうすこしであなたは私のすべてを手に入れるだろう。私たちが私たちの思うように行動するだけで、私たちの願いが叶ってゆく。知ってたよ。あなたを欲しがるだけで私はあなたのものになれるってこと。あなたの願いがそこにあること。ジグソーパズルみたいにぴったりはまる私たちの願い。なくした半身みたいに大切な人が、あなたでよかった。あなたで、よかった。



ずっと一緒にいようねなんて、呪いみたいで気持ち悪いと思っていたけど、あなたにならいわれてもいい。
あなたならすべて赦してあげる。

あなたとずっと、永遠に、一緒にいたいよ。
はやく私をあなたにしてよ。