君が育てた花。
胡蝶蘭、小手鞠、水仙、桔梗、他にもっとたくさん。
そして、僕が暮らした庭。
どこまでも突き抜けてしまいそうなほど冷たい空気。
世界に終わりを齎したあの雪は今、黄色く煌く雨に変わる。
君と、僕を、終わらせるんだ。





そして僕は凪ぐように。
そして君は薙ぎ倒すように。


どこかに居座る悲しみを消すために。





「うるさいね」
真夜中に君は呟いた。
僕には何も聞こえなかった。
何を聴いたのか訊ねても、答えてくれなかった。


うずくまる君にまとわりついたシーツをはがす。
服を着ていても君の肩胛骨はくっきりと浮かび上がる。


君は天使なんだ。





天使の庭に、黄色い雨が降っている。
晴れ渡る空なのに君の目は虚ろだ。





「お庭が死んじゃうね」
君の呟きが僕を突き刺す。

「君は死なないよ」










すべてが青く見えた。
君の庭が水底に沈んでいく。





壁の蜥蜴を見て笑い転げた。
でも、君の庭を忘れられなかった。





君は僕の手をとる。
雫に屈折した光が君を隠す。







沈んでいく草花。君の庭。
君の、僕の、墓場。










手を繋いだら真っ直ぐダイブだ!!!

青い水底に君の黒髪が揺らめく。















光の庭。天使の庭。君の庭。
水の中で息をする。