真夏の日差しの中で意識が朦朧していくように、すべてがうすぼんやりとしていてはっきりしない。
私は私は私は私は私は私は私は私は私は

私は。あのとき、



庭だった。私は庭にいたのだった。花の手入れをしようと花壇の端に座ろうとしたら、そこで日向ぼっこをしていたトカゲが私に驚いて、私から遠ざかるようにちょろんと動いたので、そこにトカゲがいたことに気が付いた。手をかざして影をちらつかせてもトカゲは動かなかった。やわらかそうな喉元をふくふくと動かして呼吸しているだけだった。ゆっくりゆっくりかざした手をおろしていっても動かなかった。私の手がトカゲに届きそうになった刹那、私は、




どこにもいない。私はどこにもいない。あの時私はいなくなってしまった。
私は私は私は。
どこへいったの。


トカゲが手に触れた感触は、彼のくちびるに触れた時のことを連想させた。すべすべでひんやりとしていて、舌でこじ開けた先ですらつめたかった。



どこにもいない私は、どこへでも行ける。私はどこへでも行ける。高速から音速、そして光速を経てなおも加速して、相対性理論が間違っていることを証明する。




真夏の日差しが私を突き刺していくように思えてならない。私の血で閃光は赤く染まり、地面に突き刺さってもなお伸び続けて私を深く切り裂いた。動けない。私の手に押しつぶされたトカゲはぱたぱたと身体をくねらせて暴れているが、逃げられないだろう。つめたくなっていく私の手と、トカゲのつめたい身体。時間が止まっていく。私の、絶望。