虚ろな目の猫はずっと僕の腕の中にいる
取り外したらもう元には戻らない硝子球がふたつ みつ よつ
つめたい部屋の中で僕らは剥製になってゆく

美しいのは僕以外のすべてであって
冬に腐りゆく木々の中いても僕は同化できない
それなのに目の前にいるこの人と足並みをそろえて歩かなくちゃいけない
この人って言うのは、まぶたの切れ端が鋭くて美しい人
僕の好きな人の好きな人

こんなことを思っているうちに左足の小指の爪が剥がれてどこかへいってしまいそうだ
ほんの少しの会話にさえ 溺れる

目の前にいるこの人でさえも
優しいこの人でさえも
完成してゆく身体をふりわけ始めた水鳥にすがって泣くんだろう

皮を剥いだって同じじゃないから

土に還ったって同じじゃないから

どんなに混ざり合ったって同じじゃないから