僕は昔、白いうさぎに好きだと言いました。
うさぎは笑って僕を抱きしめました。
シャンプーの香り、黒くてふわふわの髪、繊細でとても白い肌。
頭が真っ白になっていくのを感じます。無邪気な声が、耳元に落ちます。
うさぎと僕は手を繋いで、指を絡めます。すごく、胸が痛いです。
僕の胸には、うさぎが打ち付けた銀の杭が打ち込まれているのです。
周りには膿が溜まっています。痛くてたまらないのです。
うさぎと僕は笑って言い続けます。「貴女が好きです」「あたしもだよ」
この言葉は、言葉としての意味を持たせてもらえない、かわいそうで、儚い存在たちなのです。
なぜなら、この気持ちは、この言葉は、冗談としてしか存在してはいけないものだからです。
冗談でしか、うさぎは笑ってくれません。笑ってはいけません。僕は、知っているのです。
でも、うさぎは僕に触れすぎました。可愛らしい声を投げかけすぎました。
そして僕は、うさぎを助けたくなりました。
真っ黒に真っ白。高飛びが得意で細くて、この僕と約束をした、あのうさぎを。
「もうすぐ、コンクールだね。」
そう、コンクールなのです。僕はうさぎを待っています。
あのふたつの約束を、見届けて、果たすために。
きっと、暗く、知らない道を、僕たちは手を繋いで歩く。
何故か、うさぎに願います。
きっと、縋るように、
うさぎを愛しているのです。