攫ってきた赤ずきんは予想以上に幼いらしい。紅色の頬と高い頬骨と長い睫毛で縁どられた眼は、ビスクドールを思わせた。赤と白と黒でできた美しい生き物。
僕が攫ってきた。この子は今、僕のものだ。例え今だけであっても、今だけは僕のものであるべきだ。
だからねぇお願い、僕のものになってよ。
我慢できない。こらえきれなくなって瞼にキスをする。赤ずきんは黙って僕を受け入れる。彼が僕を拒むわけがない。赤ずきんは今、悲しみのどん底にいて、更に、僕に怯えている。そして、ただひたすら悲しみに暮れるだけだった日々に変化を齎した僕に、少し興味がある。湿った泥のように暗闇を這いずる僕らは、男婦のように淫靡だ。

血管がうすく透けている首筋にくちびるを押し付けると甘い香りがした。くちびるから伝わる、凶暴な体温。赤ずきんは目を伏せたままだ。
すこし開いていた口に無理やり押し込んだ舌で、ゆっくり口を開かせていく。赤ずきんはやっと意味を理解したようで、舌を絡めてきた。濡れた音がする。やわらかい舌の感触に眩暈がする。奪いとるように貪る。もっともっともっと。
息を荒くした赤ずきんが、赤いケープを肩から落とすように脱いだ。袖元を黒いリボンで結んだ真っ白なブラウスから透ける、線の細い身体が僕を煽る。僕のシャツの胸のあたりをつかみ、すがるような体勢でキスをせがまれる。赤ずきんをしっかりと抱きしめると、どうしようもなく感情が昂っていくのがわかった。
頬を赤らめた赤ずきんが、僕の首に回す手が熱い。深くまで伸ばした舌をゆるく吸われる。研ぎ澄まされて、こわいくらいに欲情していく身体が本能を知っている。壁際まで追い詰めた僕は、彼のうすい腰を無理やり引き寄せた。 ずり落ちるように座り込んだ赤ずきんは目を潤ませて僕を見ている。背筋が凍るくらいに美しいまなざしと、どうしようもなく熱くなっていく身体。頭がぼんやりする。心が重たい。脱ぎ捨てろ。脱ぎ捨てろ。
理性と言葉と心を捨てて、人間とは違う生き物に化身したい。心が重たい。
脱ぎ捨てろ。身体ごと脱ぎ捨ててしまえ。

咥えこむと、小さな動物の心臓のように速く脈打って痛々しかった。休まらない呼吸を聴きながら舌を絡ませて可愛がると、声を上げて小さく震えて、申し訳程度の体液を吐き出した。喉にしみて苦い。
悪くない味だ。